No.5

平成161015

  黒沢友裕

 

レコード輸入権

 

 CDが売れていない原因として、CDの値段が「高い」ということが挙げられる。消費者はより安く買いたいと思っているのである。定価より安い値段で買うということは、日本には再販売価格維持制度(通称:再販制度)というものがあり、できないことになっている。

しかし、近年はアジア圏(中国、台湾、韓国など)で安く販売されているJ-POPCD(海賊盤ではなく正規ライセンス盤として現地生産されたもの)が、日本に「逆輸入」され、安い値段で販売されているという事情がある。消費者としては嬉しいことではあるが、音楽業界側としては喜ぶべき事態ではない。そこで音楽業界は「国内盤が発売されているJ-POPの還流盤を法律で輸入禁止にすれば、国内アーティストやレコード会社の利益を守りつつ、物価の安いアジア圏にJ-POPCDを積極的に売っていくことが可能になり、売上減が著しいわが国の売上をカバーできるかもしれない」と目論んだ。そして音楽業界は国会議員や各種団体も丸め込み、国会に対して強い要請を行った。そして200462日の第159回国会の衆議院文部科学委員会で、「著作権法の一部を改正する法律案(著作権法改正案)」が可決された。来年11日からこの法案は施行されることになる。

これは先に述べた通り、「レコード会社に輸入盤の輸入を禁止する権利」を与えるものである。輸入CDは大きく分けると三種類ある。一つは国内盤である。これは海外のレコード会社が作った原盤を国内に持ち込み、日本のレコード会社がプレスしたCD(値段が一番高い)のことである。二つ目は正規輸入CDである。これは海外のレコード会社がその国で原盤を作りプレスし、輸入したCDのことである。三つ目は並行輸入盤である。先ほどの二つはレコード会社同士の輸出入であったのに対して、こちらは小売店(卸含む)同士の輸出入からくる輸入CD(値段が一番安い)である。そして今回の法改正は「逆輸入盤」に働くので正しいように見えるが、同時に関係ない海外からの並行輸入盤にも規制が働いてしまう。それだけならまだしも、日本が加盟しているWTO(世界貿易機関)の国際条約上、日本国外で生産されたCD全てに規制が働いてしまうのである。つまり、洋楽は値段の高い国内盤だけにするというコントロールが理論上可能になってしまったのである。

輸入権がある国は他にもいくつかあるが、そのどの国も再販制度はないので価格競争ができるため輸入権が悪く働くことはない。しかし日本は再販制度と輸入権で二重に価格を高いまま維持しようとしている。CDの値段を安くすることが生き残る唯一の方法なのに、音楽業界は一体何を考えているのだろうか。

 

参考URL:音楽の見張り番http://watchdogs.himajin.jp/