2004,8,10
金子 朱江
夏合宿レポート@「平成中村座ニューヨーク公演」
追加情報:2005年3月2日に、フジテレビよりDVDが発売された。マンハッタン公演と、その後の大阪公演の様子も収められている。価格は5000円。
NYタイムスが中村座絶賛
米国ニューヨークのリンカーンセンターで上演中の中村勘九郎(49)の平成中村座「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」が、20日付ニューヨーク・タイムズで絶賛された。現在公開中の大ヒット映画「スパイダーマン2」を超えるスリルが味わえる、とこの上なく高い評価。関係者によると、20日朝、現地で同紙の劇評を読んだ勘九郎は「うれしいね、まさかこんなに分かってもらえるとは」と会心の笑顔だという。
NYタイムズは、「夏祭浪花鑑」について「この夏のアクション映画の代わりに観賞すべき、もっとも心動かされる作品」「スパイダーマン2以上のスリルを与えてくれる」などと、作品全体の高いエンターテインメント性を評価。ろうそくを使った殺しの場面、通称「泥場」を「全シーンがゆらゆらとした影の中で展開され幻想的」、さらに、主役の団七、お辰の2役を演じる勘九郎には「比類なき役者」と最大級の賛辞を贈った。
ニューヨークでは、ブロードウェーで上演される芝居の成功の鍵を握るのが、最初に掲載される新聞の演劇評と言われ、特に大手NYタイムズの劇評の影響力は絶大。(スポーツニッポン)
[7月21日6時5分更新]
●演目 「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」
●2004年7月17〜25日、ニューヨーク平成中村座(一日1回か2回の公演。午後二時からの回と午後七時からの回。)
ちなみに「近畿日本ツーリスト ニューヨーク公演の旅・・・旅行代金295000円」というツアーもあった。20日、21日の午後二時からの回はこのツアーの貸切。
● 入場料金 75ドル (110円×75=8250円)
ちなみに、中村座の日本公演の入場料は12600円から1660円まである
●登場人物 団七、お辰・・・中村勘九郎(中村屋)
一寸徳兵衛・・・中村橋之助(成駒屋)
傾城琴浦・・・中村七之助(中村屋)
●ストーリー 団七九郎兵衛と一寸徳兵衛、二人の侠客が魅せる意地と粋、そして、全編に散りばめられた浪花の夏の風情がいっそう興趣をそそります。中でも、団七と舅義平次が泥にまみれて殺し合う場面は"殺しの美学"とも言われ、大きな見せ場となっています。
自由で、素朴で、しかし、どこかアナーキーな危うい狂気さえはらんだ無頼の世界を、むっとするような真夏の暑さ、賑やかしい祭りの喧騒を背景に描き切った傑作『夏祭浪花鑑』。ドラマ性にあふれ、よりわかりやすく、より完成度、充実度を増した「ニューヨーク公演」、今回も注目度抜群です。(中村座ホームページより)
これまでの海外の歌舞伎公演といえば、日本の伝統芸能の古典美を強調したものが主流であった。しかし、今回の賑やかな祭りとかなりアブナイ無頼を扱った芝居は、仮設とはいえ江戸歌舞伎の雰囲気を伝える芝居小屋ごとの引っ越しと相まって、歌舞伎の違った魅力もアピールできたようである。さらに、現地キャストによる「ポリス」も登場。観客席の真ん中で梯子に登る団七を追った。公演が終わると観客は総立ちで拍手を送り、各新聞には平成中村座の記事が大きく掲載された。
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中村一族とは?・・・図参照。
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平成中村座とは?・・・ニューヨークリンカーンセンターに建てられた芝居小屋。真夏のニューヨークの暑さに対抗するため大きな空調を備えている。
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歌舞伎の「名跡(みょうせき)」
歌舞伎の世界は、父や兄など先人の名を継ぐ世襲制のシステムをとっている。中村●●、市川●●などといった代々継承されてきた芸名を「名跡」という。歌舞伎の家の御曹司は、いくつかの名跡を襲名したあと、家を代表する名跡に至る。(例:市川新之助→海老蔵→團十郎)また、劇中に観客から「●●屋!」などと掛け声がかかる時があるが、この「●●屋」を屋号といい、江戸時代に、役者には苗字が許されていなかったため、屋号で呼ばれていた名残だと言われている。
●歌舞伎豆知識
★成立、完成ともに江戸時代。観客は今も昔も庶民。現在に至るまでの約4世紀、歌舞伎は行政や権力者に庇護されるわけでもなくあくまで商業演劇として生き抜いてきた。
★歌舞伎の語源は「傾く」。異端の風俗や精神、あるいは自由奔放なふるまい。また歌舞
伎は「慰みの芸能」とも言われている。
★歌舞伎の音楽は「下座音楽」と呼ばれる。擬音、踊りの地の音楽。「役者の動きを補う
『めりやす』は代表的」。しんみりしたシーンに長唄を合わせる、お化けの出るシーンに
ドロドロと太鼓の音を合わせる、など。
★使われる楽器・・・三味線、大鼓、小鼓、太鼓、尺八など。曲目も八百曲と多彩。
★代表的な演目「勧進帳」・・・能の『安宅(あたか)』を題材にしたもの。これを文楽にしたものが『鳴響安宅新関(なりひびくあたかのしんせき)』。ほかに、「東海道四谷怪談」「曽根崎心中」「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」「暫(しばらく)」など
など。
参考文献 井上由理子著『古典芸能楽々読本―はじめての歌舞伎、文楽、能、狂言』
株式会社アートダイジェスト 2001年10月20日初版発行
参考URL 平成中村屋ニューヨーク公演 http://www.heiseinakamuraza.jp/
中村屋公認ホームページ http://www.mypixel.co.jp/kabuki/index.html
Exciteニュース http://www.excite.co.jp/News/entertainment/
中村一族の図
元祖 猿若勘三郎
三代目 二代目 初代
勘三郎 勘三郎 勘九郎
四代目
勘三郎 六代目 初代
勘三郎 勘太郎
五代目
勘三郎 十一代目 十代目 九代目
勘三郎 勘三郎 勘三郎
四代目 十二代目 勝十郎
伝九郎 勘三郎
三代目 二代目 十三代目
仲蔵 寿三郎 勘三郎
五代目
明石
勝子
三代目
歌六
十七代目 三代目 初代
勘三郎 時蔵 吉右衛門
五代目 六代目
勘九郎 猿若明石(波乃久里子)
二代目 二代目
七之助 勘太郎