2004,11,5(卒論 No,2

金子 朱江

■劇作家の収入■

 

ブロードウェイにおける劇作家の契約は、最も条件の低いものでも正統演劇の場合、チケット売り上げの最初の5,000ドルに対して5%、次の売り上げ2,000ドルに対して7.5%、それ以降は一律10%の配当となる。ミュージカルの場合、その最低線の基準はわずかに上昇する。また一流劇作家には売り上げ総額の一律10%を受け取る者もいる。しかし、所得の90%を戯曲の執筆から得ている者はおよそ4分の1に過ぎず、この本業から所得の半分も得ていない者も同じく全体の4分の1存在する。本業から所得を得ていない彼らは、戯曲の執筆の他に、その他の作品を執筆したり、役者や演出家など演劇に関わる仕事をしたり、広告業、不動産などといった様々な分野で働き、収入を得ていた。

一般の作家と比較すると、劇作家がいかに「本業」から得る収入が少ないかがはっきりしてくる。あるサンプルにおいては、執筆から所得を得た劇作家がわずか31.5%であるのに対して、一般の作家では58.9%がそうだった。所得の額にしても、劇作家は一般の作家の約2分の1という結果になっている。

今、商業演劇が求めているのは、有望な新しい台本である。そうは言っても、投資対象として一応は確実な台本でなければならない。だからこそ、新進作家の作品を何とか低予算で舞台化しようとする少数のオフ・ブロードウェイのプロデューサーの努力が、極めて重要な意味を持つのである。こうした試みは、アクターズ・スタジオなどの劇作家部門を始めとする様々なグループによって、財団や芸術評議会等の補助を受けながら実行されてきた。劇作家達が何より欲しいと思っているものは自分の作品の発表の場であり、この試みは、その要請に応えているのである。

参考文献 『舞台芸術 芸術と経済のジレンマ』 1994年 芸団協出版