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金子 朱江

 

著作権

 

「著作権」とは?

 著作者が自己の著作物の複製・発刊・翻訳・興行・上映・放送などに関し、独占的に支配し利益を受ける排他的な権利。著作権法によって保護される無体財産権の一種。原則として著作者の死後50年間存続する。 三省堂提供「デイリー新語辞典」より

 

第二次世界大戦の落とし穴

上の説明のように、著作権は著作者が亡くなって50年たつと消滅する。すなわち、作家の遺族や権利保持者が、著作権を持つ権利がなくなるということ。

参考文献の著者飯田さんが、1992年に「赤毛のアン」を舞台化しようとしたところ、「赤毛のアン」の作者モンゴメリーの没年は1942年なので、ちょうど50年たっている計算になった。著作権料がいらなくなるかと喜んだ制作一同だったが、「第二次世界大戦中は国交がなかったので、その期間はノーカウントとする」という条件が提示された。日本との平和条約の中に、『1941127日から日本国と当該連合国軍との間にこの条約が効力を生ずるまでの期間は、これらの権利の通常期間から除算し・・・』という文章がでてくるそうである。

結局、著作権保持者である遺族に、高い著作権料を請求されることになった。(ちなみに終戦は1945年なので、1995年からは著作権はフリーになった。)

 

シェイクスピアやチェーホフなどの古典の作品は、作家も亡くなっていて著作権の保持者もいないので、上演する際に著作権料がいらなくなる。ただし、日本語で出版された本をもとに上演する場合は「翻訳者」の著作権があるので、「○○○訳」というように翻訳者の名前がチラシなどに入る。作る側に英語ができる人がいて、直接原本から訳せれば著作権料はいらなくなる。(シェイクスピア作品の翻訳は‘松岡和子’という人が多く、蜷川幸雄演出の「マクベス」「ハムレット」や、他の劇団のシェイクスピア作品にも名前が出ている。)

 

著作権料

 外国のミュージカルなどを日本で上演する場合、著作権料は通常売り上げの1012%。古い作品で、本国でもあまり上演されないような作品は89%。劇団四季がディズニーから買った「美女と野獣」の著作権料は25%で、1万円のチケット代金のうち、2500円が著作権のために使われている計算になる。

内容に払い、タイトルにも払う

 

『太陽と月に背いて』1999,4,21 世田谷パブリックシアター

作:クリストファー・ハンプトン  訳:小田島恒志  演出:亀井光子

出演:野村宏伸、高橋かおり、田中実 他

 

この作品はそもそも舞台脚本としてつくられたものだったが、(原題は「Total Eclipse」)

それを読んだイギリスのアニエスカ・ホランドという映画監督が、1995年、レオナルド・ディカプリオ主演で映画化。この時の日本語版のタイトルが「太陽と月に背いて」だった。1999年、日本でこの作品を舞台化するにあたって、内容は原作のままで、タイトルは邦題にしようとした。この時かかった著作権料は、

原作の著作権+邦題の著作権

だった。ちなみに邦題の著作権料は、映画の配給会社である日本ヘラルドに払った。仮に原題のままで上演すれば、邦題への著作権料は必要なかった。