9.改正の法的限界


 9-1 96条条文について

 第96条1項
 この憲法の改正は、各議院の総議員の2/3以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 第96条2項 
 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


 このように96条は改正手続について規定するのみで、その改正の中身については規定していない。
 よって、憲法の改正には限界はあるのか(どんな条文-主権在民や人権の尊重であっても-改正できるのか)を巡っては見解が分かれている。

 

 9-2 改正の限界を巡る議論について

 憲法改正手続に従えば、いかなる内容の改正も許されるのかを巡る議論については、限界説と無限界説が存在する。そして、確かに無限界説も有力だが、法的な限界が存在するとする限界説が通説となっている。

根拠1…自然法論的限界説

→実体憲法には自然法が上位し、憲法をも含めての全実体法の効力の有無は自然法への適合・不適合によって決まってくる。よって、改正規定による憲法改正権の行使も自然法上の制約がある。

根拠2…法実証主義的限界説

→憲法制定権力と改正権は別個なものであり、改正権は制定権力の下にある。よって改正権で制定権力に背く行為は成しえない。

 

 9-3 <付記>限界を超える改正が現実になされたらどうなるのか?

 もとの憲法からみるとその改正は無効であるが、有効なものとして実施されてしまった場合には、新たな憲法の制定ということになる。これは法的革命とでも呼ぶようなことであろう。