7.予算の法的性格


 7-1 予算の法的性格について

 憲法83条 (財政民主主義)
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。


 憲法86条
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。


 予算とは、一会計年度における国の歳入歳出の計画をいうが、この予算の法的性格については争いが存在する。

 というのは、予算が財政民主主義(83条)の観点から重要な財政監督手段であり、法規範性をみとめるべきである一方、法律と同じものとはいいにくい性質を有しているからである。その性質を順に挙げると、

一.予算は政府を拘束するのみで、一般国民を直接拘束しない。
一.内容的に計算のみを取り扱っている。
一.法律とは異なる取り扱いが定められている(60条1項、73条5項、86条)

 などがあり、故に法律とは異なる独自の法形式と考える予算国法形式説が多数説となっている。国法形式としては、憲法、法律、命令、条約、条例と種々様々あるが、予算をそれらと同様に国法形式の一つと考えるのが、この説なのである。

 

 7-2 予算と法律の不一致が生じた場合、どうすべきか。

予算の性質に付き、上記の説の立場では予算と法律の不一致が問題にされることがある。すなわち、それは、

1.予算を必要とする法律が成立しているにも関わらず、その執行に要する予算が存在していない、もしくは、成立しなかった場合。

2.ある目的のための予算は成立しているが、その予算の執行を命ずる法律が成立していない場合。

のいずれかである。これらに対しては以下の対応が求められることになる。

前者のケース;
内閣は法律に合わせて、予算を手当し、法律を執行する義務を負う。
後者のケース;
(予算を執行することができない為、内閣は法律案を提出し国会の議決を求めることが考えられるが、)

国会が予算に合わせて法律を制定する義務はない。

こうした違いは、国会が法律制定、内閣が予算の作成と考えたときに、
「国会は内閣の判断(予算)に従う必要はないが、内閣は国会の判断(法律)に従う必要がある」 という違いから生じている。